ケニアの小規模農家が栽培・製茶した紅茶を日本に紹介している日本ケニア交友会。世田谷区内に東京事務所を構えています。農薬を使わないで育てられたフェアトレードの紅茶は、在日ケニア大使館のティータイムや贈答用にも使われています。
ーー富塚さんは日本ケニア交友会でどのような仕事をされていますか? また、日本ケニア交友会の活動について詳しく教えてください。
仕事は、「ケニア山の紅茶」のPR・販売の日本窓口です。当会は、ケニアでの紅茶買付のため、1980年代後半に現地法人事務所をナイロビに設立。日本の事務所は、ナイロビ本部代表・丸川の出身地である兵庫県神戸市に開設されました。2013年に神戸での事業を引き継ぎ東京事務所が開設されました。 私たちは定期的に産地を訪ねて、常に新鮮で良質な紅茶をお客様にお届けできるよう、品質をチェック、ティスティングして紅茶を選んでいます。また、生産者農家へプレミア(上乗せ)を支払うことで、オークションに出回る前の、いちばんおいしい紅茶を買い付けることができます。
ーー紅茶は農薬を使わず栽培されているとのことですが。
原料の茶葉は、現地の生産者農家が農薬を使用しないで育てています。当会は生産者農家/工場関係者と一緒に農薬不使用の施行に関するシステムを作り、そのシステムのもと、茶畑の管理、生産がされてきました。さらに、茶葉を摘んだ日、製茶工程、ケニア・モンバサ出港から日本・神戸入港まで、すべてをトレースすることができる国際産直です。日本でも定期的に残留農薬検査(200項目)を行っています。結果はすべて「検出せず」ですので、いつも安心して紅茶をお楽しみいただけます。 産地の約5,500の紅茶生産者は、メルー族。高原地帯で農業中心の生活を営んでおり、紅茶をはじめとした 農作物を売ることで現金収入を得ています。 生産者農家の所有する茶畑は平均20アール(2000㎡)と小規模で、月曜から土曜、朝から日が暮れるまで茶葉を手摘みしています。機械で茶葉を刈る茶畑と違い、あぜ道以外、隙間なく茶木が密に植えられています。茶木がしっかりと根を張っていますので、茶畑が土壌流出防止に役立っています。「ケニア山の紅茶」を飲むことは、ケニアの環境保全にもつながっています。
ーー茶葉はていねいに手摘みされているのですね。
茶畑では、生産者さんたちが茶葉(一芯二葉)を手摘みしています。摘んだ茶葉はカゴに入れられ、生産者自身が歩いてBuying Center(茶葉集荷場)に持ち込みます。そこで茶葉の重量が登録され、農家の収入になります。集荷された茶葉は、生産者全員で所有する製茶工場にトラックで運ばれ、製茶過程に入ります。工場は、形式は「株式会社」ですが、紅茶生産者農家全員で所有されています(生産者全員が株主)。実態は、生産者の利益と福祉を考える生産者共同組合のような組織です。
ーー 生産地では子どもの教育への支援活動も行われているそうですね。
はい。1992年よりこのギドンゴ製茶工場から直接買い続けているのですが、茶葉収穫地域の公立小学校への寄付や奨学金プログラムを行っていて、生産者と当会の間には、長くて強い信頼関係があります。寄付のプログラムでは、利益の一部を地元に還元するという意味で、生産地域の公立小学校19校に、5万ケニアシリング(約5万円)ずつを順番に寄付しました。この地域の学校には紅茶農家の子どもたちが通っており、地域の人たちの交流の中心的役割を果たしています。その小学校での「寄付金贈呈式」で、教育の大切さを生徒たちに訴えると同時に、交友会や日本の消費者からの要望・お願いとして、集まった両親(紅茶農家のみなさん)に、これまでどおり農薬を使わない紅茶栽培を継続してもらうお願いしました。2011年10月に19校に対する寄付2週目が終わり、現在は寄付を一旦休止し、奨学金プログラムを実施しています。
奨学金プログラムでは、優秀にもかかわらず貧困のため高校へ進めない子どもたちに対し、2011年より奨学金の給付を開始しました。奨学生の選考は、当会が寄付を行った公立小学校の中から、小学校の校長先生の推薦を通して行います。候補者の家族が茶畑を持っているかどうか問わずに、また、成績はKCPE(小学校の卒業資格試験、全国一斉テスト)の結果で選考しています。当会の考えは、人間のつながりを大切にした紅茶販売からの利益の一部を、本当に必要としている人に援助しようというものです。なので、紅茶畑を持っていなくても、彼らも同じ地域コミュニティのメンバーなわけですから、彼らを援助するのは、理にかなっていると考えます。奨学生のリストは、ホームページ(支援活動)に掲載しています。当会の紅茶を購入することで、安心しておいしい紅茶を楽しんでいただきながら、茶葉収穫地域の小規模農家や子どもたちを支援することができます。
ーー ご自身が現在の活動に関わるようになった経緯を教えてください。
卒業旅行で訪れたケニアに魅せられ、ケニアと日本をつなぐ仕事をしたいと思うようになりました。在京ケニア共和国大使館での勤務をとおして、ケニア産紅茶の味のすばらしさ、そしてそれを小規模農家が生産しているということを知り、その紅茶を扱うことでフェアトレードに関わることができると思いました。大使館でも飲まれている「ケニア山の紅茶」を買い付ける日本ケニア交友会・ナイロビ本部での約7年の勤務後、日本に戻り日本の窓口として活動しています。
ーーフェトレードを知ったきっかけを教えてください。
ケニア大使館の最寄り駅(自由が丘)近くにあるPeople Treeさんです。
ーーフェアトレードやエシカルを知って変わったことはありますか?
買い物をするときに、生産者・生産現場はどうなのかな、と思うようになりました。 エシカル&フェアトレードの商品でお気に入りのものはありますか? その理由は? 「ケニア山の紅茶」。紅茶の味だけでなく、生産者とのつながりや支援活動がすばらしいからです! 自画自賛すみません…。 エシカルなものを選ぶと街や人、社会はどのように変わると思いますか? 多様性を認め合い、助け合いが広がり、人や環境にもっとやさしくなれると思います。
ーーいまの社会でフェアトレードにできることはあると思いますか?それは、どんなことですか?
買い物をとおして、意識と行動を変えること。
ーー団体としてこれから取り組んでいきたいこと、伝えていきたいことを教えてください。
「ケニア山の紅茶」をとおして、紅茶だけでなくケニアのすばらしさを伝えていきたいです。
ーーご自身のSDGsやフェアトレード・エシカルに関する目標を一言お願いします。
生産者、消費者、環境にやさしいことやモノを、なにげなく日常に取り入れたいです。
2019年8月 製茶工場に集まった奨学生たちと
PROFILE 団体名 日本ケニア交友会 設立時期 1980年代後半 ホームページ https://kenyatea.jimdofree.com/
Instagram mt.kenyatea facebook @mtkenyatea 主な活動内容 ケニア紅茶の買付、輸出入、PRおよび販売、産地の支援
Comments